サムエル記第一・第二解説

 サムエル記は、神によってサムエルが祭司兼さばきびとに任命され、実質的に神御自身がサムエルを通してイスラエルの民を治められるという理想的な時代が、短期間でしたが、あったことを証しています。もしイスラエルの民が、サムエルの亡き後も、サムエルのような神によって備えられた信仰者を自分たちのさばきびととして任命してくださるように神に願い求めたならば、そのような理想的な時代が続いたはずであったのです。
 ところが、イスラエルの民にとって神が定められたその制度は気に入らなかったのです。彼らは、自分たちの好みに合った王が欲しかったのです。彼らは神がさばきつかさを通して民を治められることよりも、人間が王となり、民を治める制度を欲したのです。それで、神は彼らの要求に応えられ、彼らの好みに合った人物であるサウルを王に任命されました。しかし、王になったサウルは傲慢になり、神に従わなくなったために退けられました。その後に、神によって選ばれたダビデが王に任命されました。神はダビデを世襲制の王朝の初代の王にし、彼の子孫を代々王に任命することを約束し、彼の子孫の中から永遠の王、すなわちキリストを起こすと約束されました。
 サムエル記は、そのダビデ王朝の祖であるダビデが信仰者ではありますが、如何に失敗多き者であり、彼が王に任命され、彼の子孫の中からメシヤが起こされることが、彼の家系がそれにふさわしいからではなく、全くその逆に如何にふさわしくないにもかかわらず、神の恵みと憐れみのゆえであることを、サムエル記が、そしてその続きである列王記が証しているのです。
 私たちも士師記とサムエル記と列王記を読み、人間の制度が如何に貧弱か、如何に人間を堕落させるかを学び、神が定められた制度が、信仰者に最もふさわしく、安全であり、祝福であることを学ぶことができれば幸いであります。すべての読者に、聖書が語っていることばを聞く助けを提供できれば幸いです。

山岸 登 著
A5判・477頁
2012年8月発行
税込価格:2,200円
ISBN:978-4-904805-10-7